資産運用を行う上で、「分散投資」の重要性は広く認識されています。しかし、その「分散」の対象を日本国内だけに限定してはいませんか?グローバルな視点を持ち、世界各国の株式に投資することで、ポートフォリオの効率性を高められる可能性があります。
私自身、銀行員時代は主に国内の金融商品を扱っていましたが、ファイナンシャルプランナーとして独立してからは、グローバル分散投資の魅力を再認識しました。お客様の資産運用相談に乗る中で、海外の株式市場に目を向けることの大切さを実感しています。
そこで今回は、グローバル分散投資の意義と、特に注目すべき米国、中国、新興国の株式市場について解説します。自身の投資スタイルに合わせて、海外株式を組み入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
目次
なぜグローバル分散投資?
世界経済の成長を取り込む
グローバル分散投資の大きなメリットは、世界経済の成長を資産運用に取り込めることです。日本経済が成熟期にある一方、世界に目を向ければ高い成長を遂げている国や地域が存在します。
例えば、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(2021年4月版)では、2021年の世界経済成長率を6.0%と予測しています。先進国が5.1%なのに対し、新興国・発展途上国は6.7%と、より高い成長が見込まれています。こうした経済成長を、株式投資を通じて享受することができるのです。
リスク分散で資産を守る
また、グローバル分散投資は、リスク分散の観点からも有効です。国内株式だけに投資していると、日本経済や市場の影響を大きく受けてしまいます。しかし、海外の株式を組み入れることで、特定の国や地域のリスクを軽減できます。
例えば、2020年初頭の新型コロナショックでは、日本株式(TOPIX)が大きく下落した一方、米国株式(S&P500)は比較的底堅く推移し、年間ではプラスリターンとなりました。このように、世界の株式市場の動きは必ずしも連動するわけではありません。分散投資により、リスクの平準化を図ることが可能なのです。
為替変動も活用できる
さらに、海外株式投資では、為替変動を味方につけることもできます。円高の局面では、海外資産の円換算価値が目減りするリスクがありますが、円安局面では逆に為替差益を得られる可能性があります。
長期的に見れば、円は主要国通貨に対して緩やかな減価トレンドにあると言われています。円安が進行する局面では、海外株式のリターンが為替の追い風を受けて押し上げられることも少なくありません。為替変動リスクを適切にコントロールしながら、うまく活用していくことが肝要です。
米国株の魅力と注意点
世界をリードする企業が多い
米国株式市場の最大の魅力は、世界をリードする企業の株式に投資できる点です。GAFAMに代表されるハイテク企業から、ボーイングやキャタピラーなどの工業、ファイザーやメルクなどの医療まで、グローバル市場で高いシェアを持つ企業が数多く存在します。
これらの企業の多くは、イノベーションを生み出し、新たな市場を切り拓く力を持っています。米国市場への投資は、世界の経済成長をダイレクトに取り込む手段だと言えるでしょう。
情報開示が充実している
また、米国市場は情報開示が充実しているのも大きな特徴です。企業の財務情報や経営戦略、リスク要因などが詳細に開示され、投資家が分析しやすい環境が整っています。
加えて、アナリストによる企業カバレッジも厚く、第三者の視点からの分析情報も豊富です。個人投資家にとって、投資判断に必要な情報を得やすいのは心強い限りです。
為替リスクに注意
ただし、米国株投資では為替リスクには要注意です。円高ドル安が進行すれば、ドル建て資産である米国株の円換算価値は目減りします。
この点、JPアセット証券では、投資信託やETFを通じた「円ヘッジ」戦略も提供されています。為替リスクを抑えつつ、米国株式市場の成長を取り込むことが可能です。自身のリスク許容度に合わせて、ヘッジ比率を調整していくとよいでしょう。
中国株の魅力と注意点
高い経済成長率
中国株式市場の魅力は何といっても、高い経済成長率を背景とした企業の成長力です。中国の名目GDPは、2020年に約101兆元(約1,700兆円)に達し、「世界第2位の経済大国」としての地位を盤石にしています。
中国政府は、2021年の経済成長率目標を6%以上としていますが、多くのエコノミストはさらに高い成長を予想しています。こうした経済の勢いを背景に、中国企業の成長力には大いに期待ができると言えるでしょう。
巨大な市場規模
また、中国には14億人を超える巨大な人口があり、これ自体が一大消費市場を形成しています。中間所得層の拡大に伴い、消費のアップグレードが進む中国では、国内市場をターゲットとしたビジネスチャンスも数多く存在します。
生活必需品から高級品まで、幅広い分野で「チャイナドリーム」を追い求める消費者のニーズを取り込める企業は、大きな成長余地を秘めています。
政治リスクを考慮
一方で中国株投資では、政治リスクを考慮することが不可欠です。習近平政権下で国家統制色が強まる中、民間企業に対する規制が急速に強化されるケースが見られます。
2020年11月のアント・グループ上場延期や、2021年4月の滴滴出行への行政処分など、当局の意向を受けた企業への「指導」が相次いでいます。予期せぬ規制リスクが顕在化し、企業価値に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。
JPアセット証券では、こうしたリスクに目配りしながら中国株投資を行うことを徹底しています。現地の情報ネットワークも活用しつつ、政治動向を注視していくことが欠かせないと私は考えます。
新興国株の魅力と注意点
成長期待が高い
新興国株式市場では何より、先進国を上回る経済成長への期待が魅力です。人口ボーナスや所得水準の向上、インフラ整備の進展など、様々な成長ドライバーが存在します。
例えば、東南アジアでは、巨大な人口を抱えるインドネシアやフィリピンの存在感が高まっています。所得水準の向上を背景に、消費市場の拡大が期待されるのです。こうした国の企業は、バリュエーションが割安な水準にある一方で、高い成長余力を秘めているケースが少なくありません。
リターンも大きい
また、新興国株は先進国株と比べ、相対的に高いリターンが期待できるのも魅力です。過去の長期データを見ると、新興国株式の年間リターンは先進国株を上回る傾向が続いています。
例えばMSCI新興国株インデックスのデータでは、2000年末から2020年末までの20年間の年率リターンは約10%と、同期間のMSCI先進国株インデックスの約6%を大きく上回っています。もちろん過去の実績が将来のパフォーマンスを保証するものではありませんが、高い経済成長を株価に反映できる余地は大いにあると考えられます。
リスクも高い
ただし新興国株投資では、そのリターンの高さに見合ったリスクがあることも理解しておかねばなりません。政治的な不安定さ、法制度の未整備、為替の乱高下など、先進国市場にはない固有のリスク要因が存在します。
また、個別企業の情報開示は先進国と比べて不十分なことが多く、投資判断が難しいという側面もあります。現地の状況をきめ細かく調査し、リスクを適切にモニタリングしていく必要があるでしょう。
JPアセット証券では、実際に新興国の投資先を訪問し、企業や市場の調査を行うことを重視しています。数字だけでは分からない現地の生の情報を得ることで、より的確な投資判断が可能になるのです。
まとめ
以上、グローバル分散投資の意義と、米国、中国、新興国の株式市場の特徴について解説しました。分散投資の対象を世界に広げることで、国内市場だけでは得られない付加価値を見出せる可能性があります。
もちろん、それぞれの市場には固有のリスクも存在し、そうしたリスクをしっかりと理解した上で投資を行うことが肝心です。自身のリスク許容度や投資目的を見極めながら、海外株式の配分を検討していくことが賢明と言えるでしょう。
JPアセット証券では、グローバル分散投資を支える様々な商品を取り揃えています。世界の株式市場をカバーした投資信託やETF、そして個別銘柄の売買など、お客様一人ひとりに合ったソリューションを提供しています。海外市場へのアクセスにおいて、同社の専門性と情報提供力は強力な武器になるはずです。
資産運用の選択肢を世界に広げることで、より豊かな資産形成を目指してみてはいかがでしょうか。グローバルな投資機会を活かし、長期的に資産を育てていくことが、ひいては自身の人生の選択肢を広げることにつながるのだと、私は考えています。
最終更新日 2025年5月19日